ハイセンスは受け入れ難い

2017/01/21

今、ご縁があってインディーズファッション雑誌の編集作業をお手伝いしている。雑誌の名前は「PLEASE」。2016年に創刊され年4回発刊で現在第5号の発売待ち(2月発売)。元『POPEYE (ポパイ)』の副編集長もつとめたマガジニスト、北原徹さんが「たったひとりでつくるファッション誌」をテーマに掲げて取材、撮影、編集とこなされている。

創刊号では、COMME des GARÇONS HOMME PLUS の特集記事をはじめ、木村拓哉さんなども担当しているスタイリスト野口強さんによるスタイリング、福島リラさんや竹中直人さんが Gucci (グッチ) や JIL SANDER (ジルサンダー) を着こなすファッションページなど、錚々たるメンバーが名を連ねている。第2号では、80年代の『OLIVE (オリーブ)』を連想させるような COMME des GARÇONS GIRL (コム デ ギャルソン ガール) の特集記事、今ノリに乗っていると北原さんが太鼓判を押すスタイリスト馬場圭介さんによるファッションストーリー「エイコクキブン」、伊島れいかさんによる「Sometime being a bad girl (ちょっぴり不良なストーリー)」、日本初のノーベル賞受賞者故湯川秀樹氏のお宅を訪ねたインタビュー記事ではフォトグラファーに Rrosemary (ローズマリー)さん を起用してる。

さらには日本を代表するバッグメーカー、PORTERとのコラボリュック(上の写真、なんと男性用女性用と2種類製作)を製作販売するなどインディーズ誌とは思えないスタートを切っており現在6号目の撮影、編集中である。ファッション業界での評価は頗る高く、「今までに無い雑誌」、「海外の雑誌のようだ」、「つくりがシッカリしている」等、行く先々で耳にすると自分の雑誌ではないが、嬉しくなってくる。
しかしながら、である。
雑誌PLEASEが生き残っていく上で、また今後さらなる発展を遂げていく上で重要になると筆者が考えているのは「ファッションに興味がそこまでない一般の人」を如何にして取り込んでいくのかという点である。先述した通り、インディーズ誌では取り扱えられないようなブランド、モデルなどを起用しても、興味がない人にとっては「どうでもいいこと」と一蹴されてしまっては、本屋にPLEASEが平積みされていても手にすらとってくれないだろう。ハイセンスは受け入れ難い。そこをどう崩していくか。

表向きはファッション誌である以上、ファッションをメインに取り扱っているのだが、北原さんの目に止まったお店、音楽、食など文化、生活面をクローズアップした記事も盛り込まれている。(曰くプリミティブ、原始的な、根本的な事柄も扱っていきたいとのこと。)
あとは純粋に雑誌の枠を超えてフォトブックとしての価値を見出してもらい、「読み終わったら捨てるのではなく、いつまでも手元に置いて見返したくなる雑誌」に更に進化していかなければならない。ここに活路を見出すことは出来ないだろうか。
一般に売られている雑誌と見比べていただければ分かるが、普通の雑誌が「カタログ化」(商品を見せるためだけの役割)している中で、PLEASEは取り扱うブランドの世界観や魅力を存分に引き出し、PLEASE流(北原流)に落とし込んでいる。実際に上の写真は2017年春夏のコムデギャルソン オム プリュスがテーマに掲げた「裸の王様」をモチーフに、北原さんお手製の王冠を頭にのせて代々木にある公園で撮影した一枚。

ここには「色の組み合わせの仕方」、や「1週間着回しコーディネート術」などの実用性のある内容が一切無いが、ブランドがこの服に込めた背景や何を訴えかけようとしているのかを読者に読み取ってもらう仕掛けが込められている。なぜ裸の王様なのだろう? なぜ公園の前なんだろう? この表情はどういうもの? などなど。正解はなく、それぞれの読者が思った事、感じた事が正解なわけだ。

実用性のある特集記事も役に立つし、大切であるし、筆者も参考にこのブログ内で似たような事を記事にしている。ただ、ファッションというのは実用性以外に「かっこよさ」、「可愛さ」、「豪華さ」などある種の憧れを抱ける対象でもあるように思うのだ。そこを読み取ってもらえるとこの雑誌の奥深さをより理解して頂けると確信している。明確な言葉で表現できなくとも単に「かっこいい」、「可愛い」で終わってもいいのである。そこから次の写真も見たい、次の号が楽しみだと膨らんでいくものではないだろうか?
ThemMAGAZINEというメンズファッション誌を手がける右近亨さんのブログで「なぜ何百万円もする服を載せるのか?」との問いに対する回答が「買えなくても、知ることはできる」とある。同じように上半身裸のにシースルーの実用性のないアイテムをなぜ載せるのか、特集するのかという疑問に対する答えも同様である。「真似はできなくとも、知ることはできる」。

筆者は少し前一足先に2月発売予定の第5号を見せてもらったが、一番PLEASEらしく、読者の想像力を掻き立て、ワクワクする雑誌に仕上がったのではないかと感じている。(自分が少し携わったのもあるあろうが。)何もかもがデジタルに移行する中で、アナログな紙媒体で勝負している北原さんの熱量には頭が下がる思いではあるが、携わっている以上貢献できるよう筆者自身がPLEASEの読者目線を忘れぬようにしていきたいと感じている。このブログでも日々の活動内容をもっと取り上げて宣伝していくので乞うご期待。


以下2017年1月25日追記
この度PLEASEは更にいい雑誌になるべくクライドファンディングを始めました。素敵な雑誌です、多くの皆様に見ていただければと思う雑誌です。何卒宜しくお願い致します。詳細は以下をクリックしてください。

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