「洋服が好き」というだけでどこまで続けられるのか?

2017/02/10

アパレル業界は長時間労働上に安月給だとよく言われる。
筆者も10年以上この業界に従事しているので、それは身をもって言えることだ。
特に店舗の販売員などとなれば、連休はロクに取れないし、いわゆる「通し」と呼ばれる
開店から閉店後まで12時間近い拘束時間のシフトを組まれた日のテンションったら無い。
セール時期などの繁忙期など「忙しい時期だから仕方ない」的な思考回路を正さない限りこれは無くならない。
アパレル販売員のライフワークバランスの実現などまだまだ先の話。
まあそれが実現された頃、日本のアパレル企業がいくつ残っているか、という話だが。

クリーデンスというアパレル業界を専門とする転職エージェントがあり、そちらのメルマガが定期的に送られて来る。
いつもはサラッと読み流すのみだが、今日の内容は「アパレル業界の給与の話」とあって思わず手を止めてしまった。
身近な給与の話となると興味をそそられる方も多いのではないだろうか?
業界に縁のない人からすると、プレスやらMDやらVMDやらその仕事の実態が「??」であろうが、単純に金額を見て頂きたい。
「低くないか?」と率直に思われるのではないだろうか?
(悲惨な上の表の状況を詳細にご覧にないたい方はこちらへ)

2015年のデータではあるが、サラリーマンの平均賃金は420万円となっている。
表を見る限り、どの職種でも20代では平均給与に届いていないどころか大きく乖離しているし、
35-39歳の金額を見ても平均に届いていない職種が複数ある。先述した販売など最下位である。
ちなみにであるが、平均最高額は715万円で職業は電気、ガス、水道業などのライフライン業界
2位は639万円で金融、保険業界である。詳細はこちらへ。

「金が全てじゃないなんて、綺麗には言えないわ」と歌ったのは尾崎豊であるが、
綺麗どころか、綺麗事すら言えないのが現代の販売員ではないだろうか?
しかも追い討ちをかけるように現場に近い人間ほど、服飾費に掛ける金額が高い事実もある。
毎日店頭に立つ販売員であれば、お客さんの目があるし、気は抜けないので当然と言えば当然。

知人の話だが某アパレル店のベテラン販売員が退職した際、退職金で今までの洋服のツケを支払った、という話がある。
あながち冗談とも取れない話であるが、販売員のリボ払い利用率の高さは異常だし、社販と言われる割引が適用されても、
1ヶ月のうちに何度も買っていると、金額は当然膨れ上がる。社販の割引率は平均的に3割といったところか。
セールの終わった今の時期ともなれば、新作アイテムが店頭に並び始める。
新しいものに食指が動くのは人間の生理現象である。
筆者でも魅力的なアイテムに囲まれるとついつい購入してしまいそうだ。

給料が安い割に、長時間労働で休みも取れない言わば「ブラック業界」のどこに魅力を感じるのだろう。
この業界に入るきっかけが「服が好き」という感情から入る場合が多い。筆者もそれだ。
好きな洋服や、新しいアイテムを纏うと気分も高揚するし嬉しくもなるが、洋服を買うにもお金が当然必要だし、
服ばかり買っていてはそもそも日常生活が成り立たない。
これほど「趣味は仕事にしないほうがいい」と声を大にして言える業界も珍しいのではないか。

販売員の募集をかけても人が集まらないのは、筆者が店頭に立っていた10年以上前からさほど変わっていない。
それでも当時セレクトショップがまだ魅力的だった頃は、募集をかけたら何名かは採用出来るほどの応募数はあった。
今や大半のお店が店頭に「スタッフ募集」のポスターを掲げているのを見ると、人員確保が如何に難しいのかわかる。
売上低迷以前に、こちらの方が先に取り組むべき問題であるように感じる。
ECサイトが興隆を極めているが、まだまだ実店舗の役割も大きいはずだ。

ここ最近、ファミレスの24時間営業廃止やショッピングセンターの営業時間短縮など
従業員の働き方に考慮した取り組みが随所に見られるようになった。
もっと根本的な事柄を変えない限り、一時的なことではないかと要らぬ心配をしているけれど、
賃金を改定し、労働環境を整えてやっと再スタートを切り始められるのが今のアパレル業界だと感じている。

上の表はあくまで平均であり、販売員であっても高額な給与をもらっている人が筆者の身近にいる。
フリーの販売員らしくどこかの店舗に所属することなく、百貨店などを複数持ち回りしているようだ。
インセンティブ制で売れば売るほどお金が入ってくるらしいが、このような働き方も今の時代に即しているのではないか?
配属された店舗にてお客が来るのを待つのではなく、得意なエリア、顧客がいるところに自ら出向く。
まあ、ベテラン販売員であるからこそ出来る働き方であるのは言うまでもないが、
SNS全盛の時代、若い販売員にもチャンスがないわけではないだろう。
企業はこのような動きに積極的に手当を出してはどうだろうか。

筆者も販売員からこの業界にてキャリアをスタートさせた。
販売員時代は幸い、福利厚生にまだ恵まれた企業だったので良かったが、
今から販売員をイチからやれと言われたらどう思うだろうか。きっと他の仕事を探すと思う。
好きという気持ちは確かに大事だし、それが原動力になっていることも事実としてある。
ただ業界としてその感情に長年あぐらをかいてきたツケが今、色々なところで回ってきたように思う。
このツケ、高くつくぞ、、、。

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